江戸の府内:地図・風景画

12世紀の初めごろ、江戸の地は、平川の流れの南側の丘陵地帯、いまの牛込、赤坂、金杉方面を含む桜田郷のなかの一村落に過ぎなかった。江戸とは「江の門」、おそらく東京湾から日比谷、丸の内あたりに入り込んでいた入り江の入り口を指す。鎌倉期から南北朝期までは関東武士の江戸氏が支配したが、室町時代には上杉氏の支配に移り、長禄元年(1457)、上杉の家臣、太田道灌が江戸城を築いた。道灌死後は上杉氏の直轄に移り、戦国期に入ると、上杉氏が退き、北条氏の所有となる。北条氏滅亡のあと、天正18年(1590)、徳川家康が移封されて入城。慶長8年(1603)に江戸幕府を開く。以来、江戸城拡張工事、市街地整備が続き、元禄期には、現在の大江戸府内の境域が定まる。ここでは、室町時代、道灌築城当時(15世紀)の想像図から、江戸開府直後の寛永期(17世紀)、府域の確定した寛文末期(17世紀)、さらに爛熟期の享和期(19世紀)の地図を並べる。また19世紀の江戸城内および外郭の風景を、中(城内)→東(日本橋)→南(虎ノ門)→西(市谷)→北(お茶の水)の順に主に北斎、広重の絵で示す。最後に江戸の大動脈、隅田川の上流から下流の様子を鶴岡芦水の絵巻で示す。

解説:東洋文庫理事 田仲一成

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