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浙江省温州蒼南県単档木偶戯
『粉粧楼』


2011年2月 蒼南県暁峰廟にて黄朱璜による上演
馬場英子撮影

 『粉粧楼』は、「説唐」系列に連なる英雄伝奇物語で、羅焜、羅燦兄弟をはじめとする唐の建国英雄の子孫たちが、裴天雄率いる鶏爪山の英雄軍団と共に、奸臣沈謙一味と戦い勝利するまでを描く。
 ここに紹介する『粉粧楼』の動画は、浙江省温州市蒼南県の単档布袋戯(一人遣い指人形芝居)を代表する芸人の黄朱璜氏(1964-2021)に2012年2月11日から14日まで4日間、一日二回、午後と夜、計約20時間で上演してもらった時の録画である。黄さんは、『粉粧楼』は、ふだん5日間で上演するが、調査日程の都合で4日間の上演でお願いした。1

 最初に、全8段20時間の上演のうち、初日の午後の第1段について、上演開始の田都元帥の挨拶から始め、中休みの「伝世文」も含めて全篇を公開する。なお『粉粧楼』開始前に「加演」(特別上演)として上演された「打八仙(神々の勢ぞろい)」については、別に項目をたてて紹介しているので、そちらを参照されたい。
[話の展開がわかるように、適宜、字幕を付けたが、セリフの詳細については、別途、上演原稿を整理しているので、そちらを参照されたい。(準備中)]



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 戯神の田公元帥が登場。集まってきた村人に向かい、日本の客人の要望で、「粉粧楼」を上演する、と挨拶する。


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 羅焜登場。韃靼征伐に遠征中の父羅増からの援軍要請の手紙を、奸臣沈謙が改竄し、羅増が敵に下ったと讒言して、羅家は一家取り潰しになった、と述べる。 羅増の妻秦氏は長安郊外の水雲庵に避難し、羅燦は雲南に舅の馬成龍を、羅焜は淮安の婚約者柏玉霜の元に、それぞれ援軍の要請に旅立つ。


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 羅焜の道行き。羅焜は、章焜と偽名で泊めてもらった屋敷で病に倒れるが、そこは、建国英雄の子孫で、奸臣がはびこる朝廷を嫌って山東の郷里に隠棲した程鳳の屋敷で、羅焜は手厚い看護を受ける。程鳳は、年貢の取り立てに出かけることになり、娘の玉梅を丹楼に訪ねて、羅焜の宝剣を預け、看病を任せる。


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 程玉梅は、女中を派遣して羅焜を看病させ、本に託して手紙のやり取りをする。玉梅は庭に白虎が見えたので、急ぎ弓を射る。(散歩をしていた羅焜の「原神」が現れたのだった。)羅焜の姿を見た玉梅は、預かっていた羅家の宝剣の代わりに程家の宝剣を渡して、ひそかに婚約の印とする。


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 羅焜の義兄弟胡奎は、祁子富一家三人を淮安に送って行く途中、鶏爪山の麓を通りかかる。小兵が現れ、通行料を要求して、胡奎と争いになる。打ち負かされた小兵は、砦に逃げ戻り、「すごい豪傑が現れた」と裴天雄に報告する。孫彪と謝元が迎え撃ちに出かける。
 孫彪が胡奎に打ち負かされるのを見た謝元は、胡奎を仲間に引き入れようと、同行の祁子富一家を山に連れてきて、胡奎を鶏爪山に誘い込む。胡奎は、鶏爪山が好漢の集まりであるのを知り、仲間になることに同意するが、ひとまず、祁子富一家を送り、老母に会いに淮安に急ぐ。


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 田都元帥が登場して、「老親を尊重するように」と説く「伝世文」を語った後、約10分の中休みになる。


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 淮安に着いた胡奎は、羅焜羅燦が重罪人として手配され、高札が掲げられているのを見て、驚き、老母に会った後、急ぎ鶏爪山に戻ることにする。祁子富一家は、胡家鎮で空き家を借りて豆腐屋を始め、胡奎は鶏爪山に旅立つ。


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 羅焜の婚約者柏玉霜の従兄侯登登場。従妹の柏玉霜を狙っていたのに、羅焜と婚約した、と不満を述べる。おじ柏文連の代理で淮安太府の祝いに行く途中、豆腐屋の店番をする祁巧雲を見かけ、一目ぼれするが、祁巧雲は呼ばれて奥に入ってしまう。
侯登は、羅焜ら手配の高札を見て、狂喜して帰宅し、叔母に報告する。


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 柏家の東楼。柏玉霜登場。継母の侯氏がやって来て、羅家の災難を知らせる。玉霜は、姑の羅夫人が亡くなったと聞いて卒倒。夜、花園で姑を祀ることにする。


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 柏家の花園。柏玉霜は、女中の秋紅を従えて姑を祀る。祀り終えて、柏玉霜が牡丹亭で休んでいると、物陰から侯登が現れて言い寄る。玉霜はきっぱり断る。あきらめきれない侯登は、先回りして東楼の柏玉霜の部屋に忍び込むが、騒がれて逃げる。継母の侯氏は、玉霜が侯登の非を訴えても取り合わず、玉霜は松林で自殺することを決意する。



1.この上演では、小説冒頭の羅焜羅燦の兄弟と胡奎が義兄弟の契りを結ぶ話と、この三人が満春園に遊びに行き、奸臣沈謙の息子沈廷芳にさらわれそうになった祁巧雲を救いだす話が省略されており、これが短縮した一日分の上演に当たるのではないかと思うが、未確認