現代中国の海外流出資料とその活用―『
中共重要歴史文献資料匯編』の可能性―
教養講座
(講師顔)
 中国国内の政治状況や国際情勢の下で、中国における学術研究のありようは変化し、外国人研究者が中国で文書調査やフィールドワークのような調査研究活動を行うことに対する「壁」は高くなりつつあります。そうした中で一つの可能性として注目されているのが、カリフォルニアの出版社から公刊されている大型コレクションである『中共重要歴史文献資料匯編』(「匯編」)やスタンフォード大学フーバー研究所アーカイブで閲覧可能な中国共産党、中華人民共和国の「海外流出文書」です。
 この講座では、これらの文書をすでに利用してきた研究者から、その史料的価値、また使用にあたっての問題点や課題についてうかがいます。
回 数全5回(チラシ用画像)
日 時
2023年2月22日水曜日10:00〜12:00
2023年3月9日木曜日10:00〜12:00
2023年3月15日水曜日17:00〜19:00
2023年3月22日水曜日13:00〜15:00
2023年4月3日月曜日13:00〜15:00
対 象
持ち物
金 額全回14,500円(友の会会員13,050円)/1回あたり2,900円(友の会会員2,610円)
講座コード 20230201

【カリキュラム】
第一回2023年2月22日水曜日10:00〜12:00教室:その他[講師]高橋伸夫(慶應義塾大学法学部)
[タイトル]「匯編」への誘い―資料の性格、魅力、可能性について―
概要:「匯編」は現代中国の研究にとって、非常に重要な意味をもつ新しい資料群である。その量は膨大で、現在でも増殖中である。内容的にも多岐にわたり、歴史、政治、経済、社会などさまざまな問題意識をもつ研究者の役に立つ可能性を秘めている。この資料の性格、魅力、そしてこれを利用していかなる研究が可能となるかについて語る。
第二回2023年3月9日木曜日10:00〜12:00教室:その他[講師]松田康博(東京大学東洋文化研究所)
[タイトル]「匯編」とマルチ・アーカイブの研究手法―中台関係史研究からの視点―
概要:中台関係史研究において、台湾と中国の史料公開レベルの格差は非常に大きな課題である。それはかつての冷戦史研究におけるアメリカとソ連の史料公開レベルの格差に似ていて、冷戦史研究の資料がアメリカの公開文書に偏重したのと同様、中台関係史研究も、台湾の一次史料と中国の二次資料を用いる形を取らざるを得なかった。「匯編」は、この状況を部分的に変えつつある。本講義では、マルチ・アーカイブの手法により、何を明らかにできるようになったかという事例を示すとともに、流出資料にどう向き合うかについて、議論を深めたい。
第三回2023年3月15日水曜日17:00〜19:00教室:その他[講師]河野正(東京大学アジア研究図書館)
[タイトル]「匯編」と統計資料―統計から見る中華人民共和国初期の社会―
概要:本資料の特徴の一つは、第30輯「稀見統計資料専輯」に文字通り「稀見」の統計が大量に含まれていることである。本講義ではこの第30輯に主要な焦点を当て、統計資料群の概要を説明するほか、個別の統計およびそれを利用した研究の例を紹介する。加えて報告者が専門とする当該時期の社会についての展望を示したい。
第四回2023年3月22日水曜日13:00〜15:00教室:その他[講師]小嶋華津子(慶應義塾大学法学部)
[タイトル]「匯編」と地方党政文献史料―毛沢東時代の重層的権力構造の実態把握への模索―
概要:現代中国の政治(史)を理解する上で、中央―省―市―県―郷鎮・街道―基層に及ぶ重層的権力構造の実態を把握することは肝要である。本講義では、中国における档案資料の利用が難しくなりつつある状況下で、「匯編」をはじめとする流失資料や民間資料の活用が、毛沢東時代の理解にどのように寄与しうるか、これらの資料を用いた研究を事例にお話ししたい。
第五回2023年4月3日月曜日13:00〜15:00教室:その他[講師]川島真(東京大学大学院総合文化研究科)
[タイトル]「匯編」のもつ可能性―外交史研究と民国外交官たちの軌跡―
概要:中国での調査が困難になる中でいかに研究を行うのか。「匯編」やスタンフォード大学で閲覧可能な「流出文書」をいかに活用するのか。報告者が専門とする中国外交史研究の観点から、民国の外交官で中華人民共和国に残った人物が体験した1950―60年代の生活がどのようなものであったのかということを事例にお話しします。

 全回をオンライン講座として実施いたします。
講師:高橋伸夫(慶應義塾大学法学部)・松田康博(東京大学東洋文化研究所)・河野正(東京大学アジア研究図書館)・小嶋華津子(慶應義塾大学法学部)・川島真(東京大学大学院総合文化研究科)
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